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加地永理奈のコラム
遺伝子型検査「MS」

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2022年4月6日

母牛の登録証を見ると、試料番号(MS)と書かれているものもあると思います。これも前回お話ししたSNPと同じく、親子判定のために調べるDNA配列のことを指しています。DNA配列の中には数個の塩基が単純に繰り返される配列が存在しており、これをマイクロサテライト(MS)といいます。このMSの繰り返す回数が個体によって異なり、また親から子へと遺伝するため、個体識別および親子判定に用いられます。
例えば、「AG」という塩基の繰り返し配列をマーカーに調べたとします。このMSが母親で3回繰り返し、父親で5回繰り返しだった場合、その子は3回と5回の繰り返しのMSを持つことになります。もしこれが4回の繰り返しを持っていたとすると、その親子関係は矛盾していることになります。

このようなMSはゲノム全体に約十万箇所はあり、それらをマーカーに何種類も調べることで親子判定を行うことができます。ただし現在の親子判定の手法はMSからSNPに移行しています。その理由の一つとして、MSはSNPと比較して突然変異の起こる確率が高く、一世代にいずれかのMSは変異してしまうといいます。これでは親子判定を難しくしてしまうこともあるため、SNPが主流になったようです。
ちなみにSNPやMSの検査には、以前コラムでお話ししたPCRの技術が用いられています。新型コロナウイルスの検査方法として有名なPCRは、牛の世界でも必要不可欠な技術となっています。

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