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加地永理奈のコラム
遺伝子型検査「SNP」

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2022年3月30日

前回のコラムで遺伝子型検査について少しお話ししました。そのとき出てきた「SNP」という単語について今回はお話しいたします。

牛の親子判定は鼻腔や毛根から抽出されたDNAにより行われています。牛は(人も)遺伝情報を2セットずつ持っていて、子は両親の遺伝情報を1セットずつ受け取ります。DNAによる親子判定では、親の遺伝情報が子へ1セットずつ相違なく受け継がれているかを確認します。
牛の遺伝情報は、牛同士がほとんど同じDNA配列(A/G/T/Cの4塩基の並び)で成り立っていますが、約0.1%の部分で個体間に配列の違いがみられます。この違いが牛ごとの見た目や能力といった個体差に影響しています。塩基配列の違いといっても、短い繰り返しの塩基配列の繰り返し数の違いだったり、長さの違いだったり様々ですが、現在の親子判定では、個体間で1つの塩基が別の塩基に置き換わっている箇所を目印に調査していて、そういった箇所のことを「SNP: Single Nucleotide Polymorphism(一塩基多型)」といいます。人では、アルコールに対する強さの違いが、アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子ALDH2のSNPによるものだということが知られています。
こういったSNPは数百万種類も存在し、SNPの有無がその個体情報となります。そして子は両親から両方のSNPを受け継ぎます。たとえば2セットの遺伝情報が、母で「AGA」「AGA」、父で「ATA」「ATA」のセットだったとすると、子は両親から1セットずつ遺伝するため、子の遺伝情報は「AGA」「ATA」の塩基のセットとなります。このようなSNPを特定箇所何か所も調べていき、複数の結果をもとに総合的に判断して親子判定をします。

近年ではSNPが病気になりやすさの違いや薬の反応性の違いに関係していることがわかってきていて、人医療では遺伝的な個人差を考慮したテーラーメイド医療、オーダーメイド医療を行う流れがあるようです。牛の診療でもオーダーメイド医療を行う日が…?たとえ科学的にそう呼ばれなくても、個々にあった診療を心掛けていく所存です!

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