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加地永理奈のコラム
挿枝療法やってみました

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2022年3月9日

慢性鼓脹症、慢性ガスの治療法として挿枝療法というものがあります(参照コラム:「慢性誇張症(ガス)の挿枝療法」)。先日こちらの子牛で実際にやってみました。

約4か月齢の子牛です。生後2か月経たない頃から左腹部がガスで張り、それが繰り返すようになりました。以下のような様々な方法を試みましたが、なかなかガスの再発を防ぐことができずにいました。
・第一胃内から腸内の細菌叢を整えるために生菌剤や吸着剤を経口投与
・ホースによるガス除去
・胃洗浄、胃汁投与
・消泡剤(シリコン樹脂)の経口投与
・唾液分泌を促すための口はみ、猿ぐつわ
・迷走神経麻痺を疑ってビタミンB群による神経賦活処置
など

そこで挿枝療法に踏み切ることにしました。今回用いたのは、農場にあった結束バンドです。ハサミで全体を2mm程度の細さにし、先は更に細く尖らせるようにカットしました。それを上顎の「人」型のスリットへ少しずつ挿入していきました。

挿入してすぐ突き当たるかと思っていましたが、想像以上にスルスルと深くまで入りました。5cmくらいは入っていったのではないかと思います。上顎にこんな隙間が潜んでいたとは驚きました。

左右に挿入し、余った部分はカットして完成です。

ただいま経過を観察中です。これについてはまた後日ご報告します。

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