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松本大策のコラム
「慢性誇張症(ガス)の挿枝療法」

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2008年11月17日


 以前掲示板で伏見先生のスレッドに近藤さんが書き込んでいた「慢性ガスの挿枝療法」ですが、写真がないと挿入する場所ややり方がわかりにくいという事で、改めてご説明したいと思います。

 まず、慢性ガスの治療として、シェパードではルーメンファイブを3本飲ませて、あとは通常の飼養管理をする、という方法をとることが多いのですが、10ヶ月齢くらいまでの子牛では、食道が細くルーメンファイブが飲ませられない事が多いので、ときどき挿枝療法をやってみます。
 これはどういう方法かというと、口の中に刺す針治療みたいなものです。牛さんの上あごの歯床板(牛さんは上の前歯がなく、歯茎がまな板みたいに平たく丈夫になっています。これと下の前歯で挟み切りようにして牛さんは草を食べます。)の少し後ろには、「人」という文字のようなスリットがあります(写真1)。
 このスリットは広げると穴になっていて、けっこう深くまで続いています。このスリットに爪楊枝よりちょこっと細いくらいの長さ20cm程度の棒を差し込んでいくのです。僕は共済時代に「柳の枝が一番いい」と教わったのですが、「一番太い天蚕糸でいい」という方もいらっしゃるし、僕自身竹籤でやってもさほど効果に違いは感じません。
 どういった機序で効果があるのかわかりませんが、僕はよだれの量が増えて、よだれの界面活性効果が上がったり、よだれの中のアンモニアが第一胃のphを調整するのではないか?と考えています。ただ、いずれの方法についても言えることですが、これで完璧!なんて事は期待してはいけませんよ。

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