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松本大策のコラム
「免疫のお話(6) (ワクチン接種の時期)」

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2008年11月10日

 さて、免疫のお話から、ある病気に対する免疫を人工的に与える「ワクチン」のお話を続けてきましたが、これまでのお話を総合して、今回はワクチンを打つ時期について考えてみたいと思います。というのも、「ワクチンが効かない」というご相談をお受けする際に、ワクチンの薬自体が悪いのではなく、「打つ時期」に問題があるケースをよく見かけるからです。
 たとえば、子牛をハッチから出して育成マスで多頭飼育に移すとき、「せっかく捕まえるから」といって同時にワクチンやビタミンを注射する農場をよく見かけます。しかし、移動や群編成のストレスがかかると2〜3週間は免疫が低下します。ある特定の病原体に対する「免疫」を高めるために打つのがワクチンですが、免疫系の能力が低下している時期にワクチンを打っても、免疫を作り出すことが出来ません。
 僕は、指導している農場などでワクチンを打つプログラムを考える場合、1:対象となる病気(肺炎や下痢など)がいつ頃発生しているか、2:移動や群編成のストレスがかかるのはどの時期か?、の2点を考慮して、防ぎたい病気が多発する3週間前までにはワクチンが終了すること、ワクチン接種から3週間(免疫を作り出す時期)は、移動や群編成のストレスがかかってから免疫が回復する3週間にかからないこと、を注意して決定するようにしています。たとえば、ハッチでワクチンを接種し、3週間経過してから群に移す、という感じです。
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