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松本大策のコラム
「免疫のお話(5)」

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2008年10月27日


 「生ワクチン」は病原体が生きているので、接種したときに一時的に免疫が混乱することがあります。これは正常な反応なので心配はいりませんが、問題はその隙に乗じて体内に潜むバイ菌などが暴れ出して肺炎などが広まるケースがあるのです。動物が健康なときは身体の中に隠れていて、弱ったときに暴れ出すのを「日和見感染」といいます。まさにこれが起こるわけです。ですから「生ワクチンを打つときは持続性の抗生物質も一緒に打った方がいいよ。」というのは、日和見感染による肺炎の蔓延を防ぐためなのです。
 「生ワクチン」には、もう一点注意すべき事柄があります。肺炎5種混合生ワクチンの場合、その中に含まれているBVD-MDウイルスと牛ヘルペスⅠ型ウイルス(昔IBRと呼ばれたものです)には「胎盤通過性」があることが解っています。つまり、妊娠中のお母さん牛に接種すると、このウイルスは胎盤を通じて赤ちゃんに感染してしまうのです。とくにBVD-MDウイルスが胎内で赤ちゃんに感染すると、生まれた赤ちゃんは一生BVD-MDウイルスに対する免疫をもてない(免疫寛容といいます)状態になり、また生後弱くて死んでしまう子や生きている限りウイルスを排泄し続ける「持続汚染源」となるのです。
 ですから、妊娠中のお母さん牛には、必ず「不活化ワクチン(肺炎用ならストックガード5など)を使用しなければならないのです。
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