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加地永理奈のコラム
簡易糞便検査キット ― イムノクロマト法

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2022年2月16日

農場で水様下痢の子牛がでたとき、簡易的な糞便検査キットを用いてその場で検査するようにしています。下痢の原因が広がりやすいウイルス等ではないか確認するためです。
下痢の子牛からとった糞便を少量検査キットに入れ10分ほど静置し、ラインが2本あらわれるかどうかで判定します。この写真の検査キットでは、ロタウイルス、コロナウイルス、大腸菌、クリプトスポリジウムの4種類について検査していて、その結果はロタウイルスで陽性反応が出ています。


(Rainbow Calf Scours/コスモバイオ株式会社)

この検査はイムノクロマト法といいます。抗原抗体反応を利用したしくみになっていて、糞便中に調べたい病原体(抗原)がいるかどうかを判定できます。
この検査紙には目的の病原体(抗原)と特異的に結合する抗体が含まれて、目で見られるように標識されています。検査紙が吸い上げていく糞便中に目的の病原体(抗原)が存在すると、標識された抗体がそれに結合します。その複合体がライン上にトラップされて集まることで陽性反応のラインが出ます。その上のラインは検査が終了したことを示すラインです。陰性の場合はこのコントロールラインのみがあらわれます。

特別な機械も不要、その場で目で見てわかり、現場で迅速に診断、それに応じた治療と対策ができるのがメリットです。デメリットとしては、感度がやや低いこと、陽性か陰性かの判定のみで、感染している病原体の量などの数値化は難しいことがあります。
イムノクロマト法はその簡便さから、インフルエンザやCOVID-19の検査などにも広く利用されている検査方法です。
この簡易糞便検査キットについては、笹崎先生のコラム「農場内で検査を行うメリットとは」でも紹介されており、実際に検査している動画も貼られているのでチェックしてみてください。

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