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加地永理奈のコラム
寒いときに熱を産生するしくみ③

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2022年2月9日

前回、生まれたての赤ちゃんは褐色脂肪細胞をたくさん持っていて、付加的に熱産生ができるとお話しました。ただし、体脂肪が少ないのも赤ちゃんの特徴です。その代わりに毎日飲むミルクの乳脂肪を熱産生に使っています。そうかと言ってミルクの量を増やしてしまうと、吸収されるタンパクも増えて尿石症を作り出す原因となってしまうので注意が必要です。ミルクの量を増やすのではなく、ミルクに脂肪酸のみ添加するという方法が冬場におすすめです。

しくみ③「血管収縮」
しくみ①「ふるえ熱産生」しくみ②「非ふるえ熱産生」により体内で産生された熱は、血流に吸収されて運ばれます。しかしその血流が皮膚表面近くを通ると、冷たい外気温によってせっかくの熱が冷やされてしまいます。それを防ぐため、体内の熱をなるべく逃がさないように起こる反応が血管収縮です。寒いとき、これもまた脳からの指令で、皮膚表面近くの血管を収縮させて血流を低下させます。脚先や鼻先が冷たくなるのはこの反応が起こるためで、血管収縮によって体の外に熱が逃げるのを抑えています。また血流がゆっくりになると、産生した熱を運ぶ動脈と皮膚表面で冷やされた血流を運ぶ静脈との間で熱交換がおこり、血液があたためられて戻っていきます。

以上ご紹介した「ふるえ熱産生」、「非ふるえ熱産生」、「血管収縮」という3つのしくみが、寒冷時に皮膚からの信号によって活性化され、私たちや牛さんたちの体温を一定に保ってくれています。

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