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松本大策のコラム
久しぶりのヘモ!(その2)

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2022年1月17日

 前回の処置を行ったら、あとはしっかり診断に入ります。体温や各部位の皮膚の温度、ケイレンの種類や強さ、第一胃の運動(迷走神経がやられているかの判断材料になります)、眼球の運動や瞳孔反射、心音の不整の有無、呼吸器の状態、等しっかり見ていきます。

 それから、ヘモによく似た病気との鑑別の必要もあります。ビデオを見る限り眼球振盪があり、遊泳運動、後弓反張(身体が後ろにそる)などからヘモを一番に疑いますが、上記の処置後に口をてで開いてみて(かまれないようにご注意ください。僕は先日山羊さんに奥歯でかまれて人差し指の感覚がありません(T_T)。もしも口を食いしばって開かなければ牙関緊急という破傷風の症状です。
 ヘモの場合、上記処置後に重曹500ml、酢酸リンゲルなどの補液にビタミンB1.6.12を加えて(フルスル100mlとレバギニン100mlでもよいしフルスル50mlとノルニチカミン100ml)静脈注射します。
 あとは、リハビリに口の中に粗飼料を入れてあげるのは効果があります。それから、二日くらいしたら(その前に立てるようになるものもいますけど)、つり上げて四肢の踏ん張りを訓練するとか、体位の変換を1知日に数回やって褥瘡を防ぐとかのケアになります。

 かなり運にも左右されますが、今回のは幸運にも、その日の夜には起立できるようになりました。初めて見る方は、昼間の状態がこんなに急に改善するのが信じられないでしょ?希望を持って処置してくださいね。

 今回の症例は違いましたが、破傷風でしたら、なるべく歳をとった牛から輸血(破傷風抗体を持っている可能性があるので)をしながら家畜保健所に破傷風トキソイドがないか問い合わせしましょう。

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