2021年12月27日 先月久しぶりにヘモ(原因の菌は、昔はヘモフィルス・ソムナスといっていたのですが、今はヒストフィルス・ソムニという名前です)が出たので、今日はそのお話しです。 ヘモは、京都微研さん(今は「ささえあ製薬」という名前に変わっています)がワクチンを開発してからほとんど目にすることがなくなりましたが、僕が獣医師になった頃は(35年くらい前で、まだ恐竜が歩いてた頃です(笑))、共済組合の死亡・廃用事由のNo.1で、昼夜かまわず急患で呼び出されていました。 最近、あまり目にする機会が無いため、若い農家さんや獣医さんは遭遇した経験が無い方が多く、最初に見ると「あ、これは助からないな」と思いそうなので、老婆心からここに書いておこうと思った次第です。 ヘモフィルス症は、正式には「伝染性血栓塞栓性非化膿性髄膜脳脊髄炎」というややこしい名前です。簡単にいうと、ヒストフィルス・ソムニというバイ菌の悪さで、脳の血管に血栓ができて詰まってしまうため、人で言う「脳血栓」の状態で倒れて神経症状を出します。倒れるタイミングや予後は、脳脊髄のどの部位に血栓ができたかに左右されます。どれだけ治療が早くても、血栓ができた場所次第では助からないことも多いのです。 それでも、一般的にはどれだけ早く処置を開始したかによって治る確率は大きく向上します。 ヘモに似た症状の病気がいくつかあります。現場ではリスクをどれだけ減らすことができるか、を考えながら処置と診断の順番を考えていかなくてはなりません。 まずは、確定診断前にするまずはインタゲン6gとデキサメタゾン10ml静脈注射およびカナマイシン20ml静脈注射、ヘパリン1アンプル静脈注射をするのが適切な対応です。時間が勝負なのです。ヘパリンを入れるのは血液の凝固を防いで、脳血栓を悪化させないためです。 (その2に続く) 前の記事 蹄が伸びやすいけど…。 | 次の記事 新年のご挨拶(2022年 元旦) |