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藤田真千子のコラム
No.16 あけましておめでとうございます

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2022年1月6日

あけましておめでとうございます!今年もどうぞよろしくお願いいたします。
気持ちを新たに2022年も頑張っていきたいと思います。

寒くなってきて、尿石症の牛を目にするようになってきたなあと感じます。皆さんの農場ではいかがでしょうか?今日は4-5か月齢子牛の尿石症の症例についてお話ししようと思います。

冬場になぜ尿石症が多いのか…?というところですが、以下のような要因が考えられます。
・飲水量の低下により尿が濃縮される
・寒さに対抗するための熱産生の増加によりカロリー消費が増え、蛋白が分解されて生じるアンモニアをうまく利用できず尿中に排泄される(結石の多くはリン酸アンモニウムマグネシウム)(詳しくは松本獣医師の そろそろ寒くなってきましたね )

以下今回の症例です。
陰毛に石のようなものがたくさんついていて、排尿も細いとの稟告で診察。症状から尿石症だと判断しゼノストン(尿のPhを低下させ尿石を溶かす目的)給与と50%ブドウ糖液(尿量を増やす)・レバチオニン(利用される蛋白を増やす目的)の補液を1週間ほど行ってもらうことにしました。
1週間後、再診しましたがほとんど改善は見られず、陰毛に血液が少し付着しており、尿道が傷つけられているようでした。また尿沈査を顕微鏡で確認したところ、ストルバイトの結晶も見られました。
ここで他の子牛も確認したところ、離乳した4-5か月齢の子牛たちのほぼすべてに尿石がびっしり付着していました。哺乳中の子牛のほとんどには尿石は付着していませんでしたが、それでも数頭いました。

原因を探すと、数か月前から蛋白量が高めの餌に変わっており、寒くなりカロリーが不足したため症状として現れたのだと考えられました。

このためカロリーアップを目的として、脂肪酸カルシウム(バイパスメイト)を餌に添加してもらうことにしました。シェパードでは経験からトウモロコシ中圧圧片をお勧めすることが多いですが、脂肪酸カルシウムをお持ちでしたので、こちらにしました。
治療中の子牛に関してはゼノストン1/2袋・ウロストン1袋と50%ブドウ糖・レバチオニン・デキサメタゾン(炎症を抑える)を点滴してもらうことにしました。

この1週間後、再び治療中の子牛の尿を顕微鏡で確認したところ結晶は消えており、太い排尿も確認されました。他の子牛も尿を採取してみてみましたが、こちらも結石はありませんでした。たった1週間の添加で効果が出て、食餌からのアプローチの重要性を感じました。

どんな病気でも言えることですが、個体診療をするのか、群として管理すべきなのか考える必要があるなと思いました。
 
 
今週の動画
「重大疾病を見逃さないために~呼吸様式編~」

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