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藤田真千子のコラム
No.15 脂肪壊死症を乗り越えて分娩した黒毛和種母牛②

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2021年12月23日

今年ももうすぐ終わりですね。今年最後のコラムとなりました(^o^)
先日はJAなすのの肥育部会で、弊社の社長が講演する場を設けていただきました。たくさんの農家さんと交流することができ、非常に良い機会でした。またこういう機会があると嬉しいです。皆様ありがとうございました!

今回は脂肪壊死の牛に対して、どのような治療を行ったかお話しようと思います。(前回のコラムで初診時に妊娠4か月と記載していましたが、正しくは妊娠3か月でした)

初診(5月)では、ビタミンEやパンカルを投与し、しばらくビオペア(ベタイン製剤)とリカバリーM(強肝剤)を与えてもらうことにしました。その後食欲は上がってきていたようですが、翌月、食欲なしとの稟告で再診。脂肪壊死塊が奥へ大きく成長し、直腸は圧迫され、赤黒い血便を排泄していました。この時は肝臓での脂肪代謝を改善する目的で、高張ブドウ糖液、強肝剤を点滴しました。同様の処置を食欲が出てくるまで1週間ほど続け、ミルカン(強肝剤:ビタミンB群・メチオニン含有)も継続して与えてもらいました。本当は、今まで脂肪壊死を治療してきた際に効果的であったリーシュア(バイパスコリン製剤)を使いたいところでしたが、コストが高く、保険も適用でないためこの時は断念しました。
8,9月は食欲もあり、良い調子でした。
しかし、10月になり再び食欲低下と下痢になりました。体も少しやせていました。直検すると、やはり脂肪壊死塊により消化管が圧迫されていました。いよいよ分娩も迫っているということで、ここからリーシュアの投与を開始しました。同時に食欲が上がるまでは、高張ブドウ糖液と強肝剤の点滴をおこないました。

だんだんと食欲が改善し、BCSも回復、11月中ごろには先月とは違って健康的な見た目まで回復しました。便も太く、ルーメンマットもしっかり形成されていました。

12月に入り、予定日付近で無事分娩しました。脂肪壊死がなくなっていればいいなと思いながら直検しましたが、まだ固いものが11時~2時方向にありました。幸い、卵巣をつかむ範囲には脂肪壊死塊がなかったので、今後はこの子でOPUをおこない、受精卵を作る計画です。

長い闘いになりましたが、無事に分娩できて本当に良かったです。いつの日か、脂肪壊死に悩む必要がなくなるといいな…と思います。
 
 
今週の動画
「【Access Time】早期発見、早期治療に向けた取り組み その1」

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