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松本大策のコラム
そろそろ寒くなってきましたね

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2021年11月29日

 松本です。鹿児島でぬくぬくと過ごしていたのに(ウソです!300日は出張でした)、栃木県北の那須塩原は寒くて、とくに一人もんには寒さが身にしみます(-_-)。

 ところでみなさんの地域もそろそろ寒くなってきた(いや北海道はとっくに初雪降っているし)ということで、そろそろ冬のお話しをしましょう。
 まず子牛さんですが、みなさんのところの子牛は寒い時期に毛がボサボサになったり、陰毛が白くなってきたりすることはありませんか?とくにこの症状は4~5ヶ月齢くらいに顕著に出やすいです。これは、普通の時期でしたら飼料中のタンパク質とカロリー(TDN)のバランスが取れていて、吸収したタンパク質を身につけるためのエネルギーもちょうどいいのですが、同じ飼料だと冬場は寒さに抵抗して体温を維持するためのカロリーが余計に必要になるので、せっかく吸収したタンパク質を身につけるためのカロリーが不足して、身につけられなかった余分なタンパク質が、老廃物のアンモニアとして血液を介して全身に回るのです。
 その結果として皮膚の毛根が傷んだりして毛が粗くなりますし、血液中のアンモニアは毒物ですから尿中に排泄されて、尿をアルカリ性にします。尿が酸性であれば尿中の無機リンとマグネシウムはイオン化して(つまり溶けた状態)いるため尿結石になりません。しかし、尿がアルカリになると、尿中のアンモニアが無期リンとマグネシウムをくっつけて「リン酸アンモニウムマグネシウムという物質になってしまい尿中に結晶化します。これが尿結石で、陰毛が白くなるのはこれが起こり始めている徴なのです。
 同様に肥育牛では、冬場になんだか痩せた、鞍下が薄くなった、縮こまってきた、なんて症状が見られます。来れもタンパク質はきちんとあるのに、それを身につけるカロリーが不足するために痩せてくるのです。「まあ、春になれば元に戻るから」と放っておくと、春先に急速に牛が膨れてきて「あ、ほら戻ってきた!」と喜んでいると出荷したときに肉の締まりが無いとか肉色が悪いとかのクレームが来るようになります。
 また繁殖のお母さんでは、発情は周期的に来るのに種付きが悪い、なんてことが起こります。

 これらの症状を防ぐためには、冬場に中厚のトウモロコシ圧片を子牛で100gくらいから300gくらい少しずつ増やしながら与える、肥育牛や繁殖牛では500gから1kg(寒さや傾倒で異なりますからね)与えてあげる、というやり方が効果的です。

 毎日状態を見ながら、どこで増やすのをやめたらいいのか判断なさってくださいね。

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