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No.24 家畜の改良技術 その19 OPU編 |
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2021年2月26日
○OPU-IVFによる胚生産
前回の家畜の改良技術シリーズで雌雄産み分け編が終了しました。今回からはOPUについて紹介していきますが、OPUというワードを聞いたことがない方もいらっしゃるかと思います。OPUという技術は世界的に見ると牛を改良増殖するためには必須となっており、人工授精よりも体内胚生産よりも改良スピードが著しく向上します。私のコラムでも概説しますが、笹崎先生(兄)のコラムでも解説されていますのでご覧ください。
本題のOPUに入る前にまずは前提となる牛の繁殖について確認します。家畜としての牛の繁殖方法は現在のところ大きく3つあります。
1つ目が雄牛と雌牛を自然交配させるいわゆる「本交」です。繁殖牛群や搾乳牛群の中に種雄牛(まき牛)を放して発情が来た雌牛と自然交配させます。実例をたくさん見たことがあるわけではないので申し訳ないのですが、人工授精や胚移植で受胎しない場合の最後の手段として用いられていることが多い印象です。もちろん、メインの繁殖方法として活用されている農場もいらっしゃるかと思います。メリットとしては人が発情発見をしなくていいこと、AIやETと比較すると受胎率が高いこと、でしょうか。
2つ目が人工授精(AI)です。現在の子牛生産のほとんどがAIで行われていることはご存知かと思います。AIの登場によって家畜改良が進んだことは私のコラムでも紹介しました。
3つ目が胚移植(ET)です。AIではできないことがETによって実現しました。例えば、ホルスタイン種に黒毛和種の子牛を産ませたり、同じ黒毛和種でも親と血統の全く異なる子牛を産ませることができたり、といったことです(借り腹生産)。また、AIでは後継牛を多くて10頭程度しか残すことができませんが、1頭の雌牛からたくさん胚を生産することで、ETであれば数百頭残すことも可能です。その雌牛が高育種価であれば改良はさらにスピードが上がりますし、生産した胚は高付加価値があるので高値で取引されます。(ETについては別の機会に詳しく説明したいと思います。)
目的に応じてこの3つの方法を使い分けて活用されているのが家畜の牛の繁殖だと思います。
今回のテーマであるOPUという技術は、ETで移植する胚を生産するときに使われるものです。ETという技術を最大限活用するには「1頭の雌牛からたくさん胚を生産する」ということが必要となってきます。胚の生産方法は他にもいくつか手法がありますので次回から見ていきたいと思います。
※今回から分かりやすいようにタイトルに○○編とつけてみました。
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