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戸田克樹のコラム
第321話「やっぱり導入チェックは大事④」

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2021年2月10日

④なぜ注射痕をチェックするのか

弊社では導入牛に対して肺炎予防のためにミコチル(Elanco Japan)と5種混合生ワクチン(京都微研)、肥育期間中のビタミンA欠乏予防のためにゼノビタン(ゼノアック)などを投与することが多いです。その際に、ついでにチェックするのが注射痕の有無です。

獣医師が治療しても、肺炎などである程度長い期間筋肉注射を実施すると注射部が腫れてコリコリと硬くなってしまう場合があります。もし導入牛に注射痕があれば、「何やら治りの悪い病気にかかっていた過去がありそう」という不穏な空気が流れます。もし大きな注射痕が確認できた際は可能であれば長期治療がなかったかを確認したいところです。

頸部にも同様に注射が原因と思われるシコリが見られることがあります。通常は肩部に注射を打ちますが、頸部に注射が打たれたために腫れた可能性があります。

頸部は筋層が薄いせいか、たとえ長期投与でなくとも注射をするとすぐに腫れてしまいます。そのため、頸部には注射をしないよう普段から気をつけていますし、牧場のスタッフの方々にもそのように伝えています。ただ腫れるだけであればよいですが、その後もシコリとなって残ればその部分は廃棄となりますし、炎症部に細菌が侵入すればそこに膿瘍が形成されるため、あとあと切開や患部洗浄などの別な処置が必要になってきます。なお、炎症により組織が硬結してしまっても可食部位に影響が出ないため、シェパードでは皮下注射をおすすめしています(松本コラム2019年3月18日4月1日参照)。

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