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戸田克樹のコラム
第320話「やっぱり導入チェックは大事③」

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2021年2月3日

笹崎先生「戸田先生、昨日それミーティングで確認しあいましたよ。先生も『ふむふむ。』っておっしゃってましたもん。」
戸田「え!?そうだっけ???うわー…全然覚えてない。それじゃあ昨日と同じこと聞いてるってことやんけ。」
というやり取りが最近ありました。どうやら脳内の神経系が不具合を起こしているようです。どうしましょうか…。

③なぜ臍(ヘソ)をチェックするのか

意外と盲点なのが臍です。臍のトラブルは哺乳期の間に気付かれることがほとんどなので、肥育素牛として牧場に導入される際にはすでに治療が済んでいる、もしくは繁殖牧場で治療歴が把握できているので競り市で発表があるというケースが基本です。私も導入牛の臍チェックで異常に気付いたケースはこれまで1件しかありません。

ん…?

1件あるのか!?と思った読者の皆さん。鋭いご指摘です。私でも1件遭遇したということは皆さんも遭遇する可能性はゼロではないということですね。やはり注意が必要です。とくに、遭遇する機会が少ないからこそ臍の異常は見逃してしまう可能性も大いにあるのではないかと思っています。

ただそこまで心配はありません。臍は異常があれば見た目に大きな変化がありますので発見はしやすいです。臍のトラブルは大きく3つです。1つめは「臍帯炎」、2つ目は「臍膿瘍」、そして3つ目は「臍ヘルニア」です。子牛の時期に臍から細菌が侵入すると臍帯炎を起こします。

そこからさらに進行すると、増殖した細菌が分泌する膿汁や炎症による浸出液が臍部に蓄積し、臍膿瘍になってしまいます。

ただ、これらの2つは発熱したり、腹部痛でミルクを飲まなかったりするため、繁殖農場で気づかれることが多いです。肥育農場で初めて見つかるというケースは非常に稀でしょう。

とうことは、導入牛のチェックで遭遇する可能性が高いのは最後の臍ヘルニアということになります。この診察は簡単です。「ポコっと臍が出ている」「奥の方に穴があり押すとお腹の中に戻っていく」という2点が確認できればそれは臍ヘルニアで確定です。指1~2本分程度の穴であれば全く問題ないのですが、中には4本指以上入る強力な臍ヘルニアもいます。

それが原因で病気になるわけではないのですが、ヘルニア輪に四胃や小腸が入り込むことで円滑な消化管の蠕動運動が妨げられます。その結果、採食量にムラが出たり、早期の食い止まりが発生したりするなど、順調な増体が見込めない可能性があるため、肥育牛にとっては致命傷となりえます。導入牛に大きな臍ヘルニアがあった場合は要注意です。将来の成績に大きく影響を及ぼしますので絶対に見落としてはいけないですね。
つづく

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