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戸田克樹のコラム
第298話「対処すべきうつ熱かどうか①」

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2020年8月26日

鹿児島や宮崎の農家さんは暑い時期に体を揺らしながら呼吸をする牛を見慣れているのであまり驚くことはないのではないでしょうか。しかし、最近はさまざまな地域で猛暑日が確認されるようになっていますので、そのような牛は全国的に見られていくのではないかと思っています。最初は呼吸の荒い牛を見つけると非常に心配になりますが、すぐさま対処しなければいけないケースがある一方で、心配しなくても良いケースももちろんあります。今回はその見分け方をご紹介します。

肥育牛や繁殖母牛の場合
気温が高くなると体を揺らしながら普段より早い呼吸をする牛が増えます。牛は私たちと違って汗をかくことによる放熱量が少ないため、犬がパンティング(舌を出してハッハッと行う細かい呼吸)するのと同じで呼吸によって体内の熱を外に出し、すこしでも涼しい空気を取り込もうと頑張っている状態です。

この呼吸を確認したら、以下のポイントをご確認ください。

①エサを食べているか
 エサを普段通り食べられていれば心配ありません。逆に、少しでも残滓が増えていれば体調がすぐれない証です。

②涎をたらして頭を下げている、あるいは舌を出している
 これは重度の肺炎の際にも見られる症状です。肺炎かどうかの確認も必要となりますので、体温の測定とともに、肺音の確認も行ってください。

③あまり動かない
 暑くなると活発さは弱まりますが、そんなときでも人間が部屋に入ってきたらすぐに逃げようとするはずです。部屋に入ってもほとんど動かない、あるいは簡単に捕まえることができるような場合は注意が必要です。

たとえ体を揺らしながら呼吸をしていても「エサを食べていればOK」とざっくり覚えておいてください。たいていの場合、外気温の低下に伴い呼吸は落ち着いてきます。気になるような場合はまずは体温を測定してみましょう。呼吸がはやくても38℃台と平熱なケースも意外に多いです。もちろん、40℃近い、あるいはそれ以上だった場合はすみやかに体を冷やしたり、氷水を飲ましたり(明日の蓮沼コラムに動画が掲載されます。お楽しみに♪)するなどの対応が必要になります。

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