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戸田克樹のコラム
第297話「うつ熱と熱中症」

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2020年8月19日

猛暑、酷暑というワードを毎日耳にし、熱中症の緊急搬送のニュースも絶え間なく報じられる日々が続いています。獣医師の先生方も農家さんも外で仕事をする時間が長いです。こまめな水分補給と十分な休息をとり、体調を崩さないよう留意していきましょう。

さて、今回は「うつ熱」というワードを紹介します。
牛は人間のように発汗による放熱ができないため熱がこもりやすく、さらにルーメンで生じる発酵熱も追い打ちをかけます。体内で発生する熱をうまく外に逃がすことができないと体温がどんどん上昇し、うつ熱につながります。熱中症と同様のイメージです。

細菌やウイルス感染による発熱だと、炎症反応による体温が上昇に加え、鼻水が出たり咳をしたりします。しかし、うつ熱の場合は外気温が高すぎたり、湿度が高く放熱がうまくいかなかったりした結果体温が上がった状態のため、鼻水や咳といった風邪のような症状は示しません。代わりに呼吸が異常に早い、ふらふらしている、元気がない、といった症状が現れます。

前者の場合は抗生物質や解熱剤を使用して治療すればよいのですが、後者ではそういった薬剤の使用はまったくもって効果がありません。風通しのよい場所に連れていく、ファンの風速を上げる、牛体を直接冷やす、氷水を飲ませるなど、とにかく体温を下げることが肝要になってきます。

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