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戸田克樹のコラム
第299話「対処すべきうつ熱かどうか②」

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2020年9月2日

子牛の場合
子牛も暑くなると呼吸数が増えてきます。座りながらお腹が動くような強い呼吸をする様子がよく見受けられるようになります。子牛の場合、体温調整機能が未熟なことから体温が外気温の影響を受けやすく、体温での治療判断が難しくなる問題が生じます。

例えば呼吸が速く、体温を計ると39.5℃…。ちょっと高いですよね。でもすごく元気で母乳もよく飲んでいる、というようなケースの場合を考えてみましょう。普段であれば39.5℃という体温だと治療します。でも、夏場でこのような症状の場合だと、抗生剤や解熱剤を使用してもあまり熱が下がらないケースが発生します。

熱は高い気がするけど元気。でも呼吸は速いよ?でも元気いっぱいだよ?ということで治療を続けるべきかどうかの判断に迷いが生じることがあります。夏はこの悩みにたびたび出くわします。

肥育牛や母牛であれば「エサを食べていればOK」というざっくりした指標をご紹介しました。子牛の場合、私は「39.5℃までは元気・飲乳欲があればOK」という基準を設けています。というのも、この基準を満たしている場合、治療をしても熱があまり下がらず、治療を中止しても症状が悪化しないことが多いためです。

もちろん元気がない場合はたとえ39.5℃であっても感染性の発熱ととらえて治療を行います。元気がない場合は抗生剤や解熱剤の投与で熱は下がり、体調が改善することが多いです。また、39.6℃以上であれば元気があったとしても体を冷やすなどの対策をとる必要があります。子牛は1晩で容体が急変することがありますから基準となる体温を上回っている場合はすぐさま対処しましょう。油断は禁物です。

呼吸の速い牛すべてを治療するわけにもいきませんし、治療しないとなると「大丈夫かな」と不安になってしまいます。呼吸様式を見て焦るのではなく、子牛での基準、肥育牛や母牛での基準を自分なりに設定し、すぐさま処置すべきか、今日は様子をみても大丈夫か、という判断をつけられるようにしておくと気苦労が減るのではないでしょうか。

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