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ゲストのコラム
「和牛への支援と将来展望(出雲普及員のコラム第5弾-2)」

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2018年11月9日

2,大農業地帯の十勝での普及活動(十勝北部農業改良普及センター)
 
 十勝は北海道内でも農業が盛んな地域で、1市12町村の十勝全体では3,000億円を超える農業生産額を誇り、1農協でも300億円を超えるほどの地域です。農畜産物を生産する農家とそこに資材を供給する肥料や飼料、農薬メーカー、そして畜舎などを建てる建築業者、農機具会社や乳業会社などが地域の基幹産業である農業を支え、産業クラスターを形成しています。

 平成20年に所長として赴任した十勝北部農業改良普及センターは士幌町にあり、普及センターは農業技術集団として地域から信頼され、期待されていました。期待に応えるため、畑作、園芸、畜産の各専門分野の職員が働きやすい環境づくりに努めました。連携した活動ができるように、JA組合長や町長との情報交換を密にし、お互いに知恵を出し合い相互補完しながら業務にあたるように気をつけました。

 仕事の8割は所長としての業務をしなければなりませんでしたが、牛が好きな私は、畜産担当の部下を巻き込みながら、和牛の技術支援を行いました。担当区域には和牛の歴史がある音更町があり、JAに段取りをつけてもらっての巡回指導や集合研修など、和牛改良組合と連携した活動を中心に支援にあたりました。

 たまたま、その地域で日本短角牛の試験肥育に取り組むことになり、飼料効率の良い短角牛に興味があったので、飼料設計や試験結果の取りまとめなどをさせてもらいました。肥育牛の飼料は、舎飼い時はコーンサイレージ、乾草、くず小麦、フスマ、ビートパルプなど、放牧時は牧草だけで飼育しました。短角牛は飼料効率が素晴らしいことが、この試験でよく分かりました。こういった飼料メニューにも関わらず、1kg/日の増体が得られ未利用資源を有効活用できる短角牛には、非常に可能性を感じました。残念ながら平成22年当時は、国産赤身牛肉に対する評価が低く、枝肉単価750円×枝肉重量460㎏=345,000円/頭では、素牛代と飼料費などの経費を引くと採算が取れず、試験肥育だけで終わってしまいました。そのお肉を購入し普及センター職員で試食会を開きましたが、赤身肉として美味しかったです。中でも職員が手作りした短角牛肉100%ハンバーグは、これまで食べたハンバーグで最も美味しかったことを鮮明に覚えています。


試験肥育中の短角牛を放牧しましたが、日増体重は1.0kg近くになりました

つづく

技術士(農業/畜産) 出雲将之
 
 
~ 出雲普及員のコラムシリーズ ~

出雲普及員のコラム第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条−1

出雲普及員のコラム第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−1

出雲普及員のコラム第3弾「牛さんの気持ちになって考える

出雲普及員のコラム第4弾「牛さんとわたし
 
 

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