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ゲストのコラム
「和牛への支援と将来展望(出雲普及員のコラム第5弾-3)」

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2018年11月16日

3,酪農地帯での和牛支援
 
 平成24年から別海町という酪農専業地帯に2年間勤務しました。冷涼な気候から農地は牧草地がほとんどで、北海道でも有数な牛乳生産地域でした。当然、ホルスタインなどの乳牛を飼っている酪農家さんがほとんどでしたが、受精卵移植などを活用しながら和牛生産に取り組まれている方がおられました。

 ここでは、子牛を40~50日令で出荷する和牛のスモール市場を、初めて見ました。毎週開催される家畜市場に、20頭程度の和子牛が上場され競りにかけられていました。農場施設の関係から、子牛を10カ月近くも飼育できない事情と、スモール市場としてのニーズがあったこととが合致して、こういう売買形態が成立していました。この日令で将来性を判断するのは難しいため、血統と体重(発育)で価格が決まっていました。

 酪農地帯のため、ホルスタイン子牛と同じ感覚で哺乳量を決定する方が多く、哺乳量が少ないことを指摘し、巡回や講習会で繰り返しお話しさせてもらいました。その甲斐があって、「出雲さんの言う通りミルクの量を増やしたら、子牛の発育が格段に良くなった」と喜ばれました。和牛に関する情報があまり入ってこない地域では、飼養管理の改善につながる情報発信が大切であることを認識しました。

 また和牛子牛の家畜市場が近くにないため、出荷は215㎞離れた家畜市場に運搬しなければなりませんでした。そのため値段に折り合いがつかないと思っても、主取りをすることがためらわれ強気で競ることが出来ませんでした。技術情報や販売でハンデを抱えながらも、頑張って和牛生産に取り組まれていました。

 酪農地帯では、農家さんが人工哺乳の技術があるので、和牛子牛の生理的特徴を理解して、それに対応した飼養管理を駆使出来れば優良子牛の生産が可能だと思いました。また受精卵移植が一般化しているので、遺伝的能力が高い雌牛の生産が容易にできることも酪農地帯としての優位性だと感じました。


生後50日令で家畜市場へ出荷された黒毛和牛

つづく

技術士(農業/畜産) 出雲将之
 
 
~ 出雲普及員のコラムシリーズ ~

出雲普及員のコラム第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条−1

出雲普及員のコラム第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス−1

出雲普及員のコラム第3弾「牛さんの気持ちになって考える

出雲普及員のコラム第4弾「牛さんとわたし
 
 

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