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戸田克樹のコラム
第146話「ペニシリンアレルギーの恐怖~そもそも論~」

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2017年7月26日

そもそもペニシリンってなんでしょう。
農家さんにとっても、獣医師にとってもかなり身近な薬剤ですよね。
「あの白くて濁ったやつでしょ?」とすぐにイメージできる方が大半なことと思います。

ペニシリンの構造やどうやって病原体を退治してくれるのかについては112話122話を参照ください。

病原体のもつ「細胞壁」と呼ばれる一番外側の殻をうまく作れなくすることが重要な効果ですね。細胞膜がむき出しになると、外部環境に耐えきれず病原体は死滅していくのです。

アレルギー反応というのは過剰な免疫反応です。免疫反応が起こるためには体が「これは異物だ!やっつけなきゃ!!」と、侵入してきたものを自分の体にとって不都合なものだと認識する必要があります。ここで大切になってくるのがペニシリンの構造です。
アレルギーを引き起こす原因はこの構造にあるのではないかというわけです。

ペニシリンはβラクタム系抗生物質と呼ばれます。

「βラクタム環」と呼ばれる構造を有しているからです。この構造がアレルギーを誘発させている可能性があります。ペニシリンでなくても、この環状構造をもつ抗生物質であればアレルギー反応が出る可能性は十分にあります。ここ、重要です。代表例はセフェム系の抗生物質です。
ペニシリンアレルギーが出たからこの牛には使えない…。そこで「セフェム系」と書かれている薬剤を投与するのはNGです。確かにペニシリンではないのですが、形は非常によく似ています。なにせβラクタム環をもっていますからね。結果的にはペニシリンを投与したときと同様、免疫細胞が反応を起こしてアレルギーを起こしてしまうというわけです。

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