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戸田克樹のコラム
第85話「白血球のおはなし⑩」

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2016年5月10日

「これ、どうにかなりませんかねぇ…。」

という電話でかけつけたところ、目の前にいた牛さんはこんな感じでした。
眼瞼にできた乳頭腫がどーん!と自己主張。目に入って痛いのか、涙もポロポロ…。

かわいそう(>_<) ということで鎮静下にて切除。 正常組織との境界が非常にあいまいで、どこまで攻めるべきが悩みました。 ギリギリまで取って、また再診予定を組み、とりあえず処置は無事に終了。 きちんよ見えるようになるとよいのですが、はたして。  
 
さて、もうひとつのリンパ球である「B」リンパ球を今回はご紹介。

彼の能力は抗体を作りばらまくことです。

こんなイラスト、見たことありませんか?


(メディカルサイエンスインターナショナル社『エッセンシャル免疫学』より抜粋。抗体はこんなY字型でしばしば表現されます。)

抗体は、体に侵入してきた最近やウイルスなどの病原体にくっついて、その活動を弱めたり、「こいつ敵や!捕まえてくれ!」というメッセージを免疫細胞に発信する機能があります。

Bリンパ球はこの抗体をじゃんじゃん作るという仕事をこなしてくれます。
同じリンパ球であるTリンパ球から情報をもらうと、抗体産生能力はさらにパワーアップ!免疫細胞同士、密に強力しあって私たちの体を守ってくれているのです。

ただし、そんなBリンパ球にも弱点が。
Aという抗原(病原体)に対抗できる抗体A´という具合に、1つのB細胞は1種類の抗体しか作れないということです。

Bという抗原が侵入してくれば、また一から抗原Bの情報を処理して抗体B´を作らないといけない。
ひとつのBリンパ球がA´もB´も同時に作ることができないのです。

その代わり、抗体産生能を身に着けたB細胞は、一度に大量の抗体をつくることができます。効率は悪いかもしれませんが、そのパワーたるや、すばらしいものがあります。

さらに、一部のBリンパ球は「記憶細胞」となります。抗原の情報を忘れることなく、体内のリンパ管をぐるぐるとめぐり、同じ抗原が侵入してきたらすぐにたくさんの抗体を作ってくれるのです。

朝聞いたことをすぐに忘れる戸田とは大違いです。
免疫細胞を見習って、一度得た情報は忘れないようにしたいものです。

がんばれ、戸田!

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