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蓮沼浩のコラム
第437話:魔法の弾丸 その6

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2016年4月14日

 最近はやたらと日本史の勉強に力が入っています。やはり歴史は面白いですね。多くのことを学べます。

 エールリッヒ先生がついに作り上げたサルバルサン!今まで不治の病といわれていた梅毒が治るのですから、それはもう大騒ぎです。多くの人がこのサルバルサンで命が助かりました。絶望の淵にいた人たちが、本当によかった。めでたし、めでたし、となるはずが・・・・・しばらくするとエールリッヒ先生のもとに世界中から治療成績やさまざまな手紙が届きます。
 その中には抜群の治療成績を出した報告もあるのですが、残念な報告も含まれていました。特に問題のなかった人が、サルバルサンを投与されることでシャックリ、嘔吐や足の硬直・痙攣がとまらなくなったり、ひどい場合は死亡してしまったりなど。そうです、副作用による問題の報告が来たのです。死ぬほどでもなかった人が、サルバルサンを注射されると間もなく死んでしまうような事例が少なからずあったのです。

 華々しい栄光が訪れた矢先に、今度は次々と寄せられる副作用等の報告。選択毒性という概念から魔法の弾丸を作り上げたエールリッヒ先生はこれらの好ましからぬ事象に対して、それこそ心をすり減らして対応していくしかなかったのです。さすがの楽天家の先生も、身も心も疲れ果ててしまったそうです。
 「不運続きの7年間に幸運だったのは一瞬だった」
 最後はちょっと切ないものがあります。
 しかし、確かに問題は多々あったかもしれませんが、エールリッヒ先生の残した業績は人類にとってかけがえのない第一歩だったことは間違いありません。

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