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桐野有美のコラム
「ルワンダ便り−11 「ベテリネーリのお仕事」」

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2010年8月9日

 牛飼いさんの日常に欠かせないのが獣医さんの存在ですが、この国には2種類の獣医がいます。ひとつは、海外の大学(6年)を卒業した「ドクター獣医」。日本の獣医師に相当する資格です。こちらは数も少なく、だいたい省庁に所属して管理職のようなことをしています。そしてもうひとつは、国内の高校の畜産学科を出た「獣医技術者」。実際に現場で牛や農家さんと関わっているのは、彼らです。
 数年前に国はすべての市に獣医技術者を配置しました。わりとひらけた地域では、電話で獣医技術者を呼ぶことができます。獣医技術者は単車に乗ってやってきて、牛をざっと眺め、「あれとこれを買ってきて注射しなさい」と農家さんに指示して帰っていきます。一応、ちょっとした町まで行けば家畜用の薬局があるので、農家さんはそこへ言われた薬を買いに行きます(注射器から麻酔薬まで処方箋なしで買えます)。農家に薬の買い置きがあれば、写真のようにその場でそれを注射することもあります。薬をあらかじめ常備するほどの経済力は獣医技術者にはないし、雨季は特に道が悪いので農場にたどり着くだけでも一苦労。治療する側もこれが精一杯なのかもしれません。一方、農村部で往診体制が整っていない地域では、牛が病気になってもなす術がなく、ただひたすら自然治癒力で治るのを待つしかないのが現状。ときには薬草などの民間療法を試すこともあります。
 何度か現場からの要請に応じて診療のヘルプに行ったことがありますが、車が泥にはまってそこから延々と歩いて登らないといけなかったり、いざ帝王切開しようとしたら、用意された水はひび割れたタライに入った赤茶色の水だったり・・・ベテリネーリはなかなか大変です!
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