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桐野有美のコラム
「ルワンダ便り−9 「牛はやっぱり特別」」

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2010年4月15日

 今回からは牛飼いさんがどんなふうに牛を飼っているか、をレポートしようと思います。
 ここルワンダでは、これだけ酪農がさかんなわりに今のところまだミルキングマシーンが導入されておらず、みんな手で絞っています。といっても、牛飼いさんが自分で牛の世話や搾乳をすることはほとんどなく、使用人を雇っています。使用人の月給はだいたい5,000〜20,000フラン(1,000〜4,000円くらい)。たったそれだけ?と思いますが、実際やってる作業は日本の畜産農家に勤める従業員の仕事量の10分の一もないくらいなので、こんなもんかなぁと思います。だってたかだか10頭前後の牛のために3人も4人も雇われているんです。朝、夕の搾乳をして、放牧場があるところは牛をのんびりと移動させ、たまに牛舎の床をちょちょっと掃除して、草を切って食べさせ、あとはボーッとしてる感じ。だから、場合によっては写真のように貧困家庭の子供が住み込みでこの仕事をしていることもあります。
 そうそう、牛舎の床を掃除するとき、彼らは手で牛糞を集めます。牛糞は「アマセ」といって、他の動物のものと区別して呼ばれます。牛糞だけは匂いもないし汚くない、という意識です。実は他にも「牛にだけ使われる単語」がいくつかあって、例えば、「こぼす」という単語。何か液体を「こぼす」というときに使う動詞は「クメナ」ですが、こぼしたのが牛乳だと、同じ「こぼす」でもこちらは「クボゴラ」と言います。この区別は、牛に対する敬意の表れ。うーん、とにかく牛サマは特別なんですね。
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