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桐野有美のコラム
「ルワンダ便り−8 「すべての家庭に牛を!」」

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2010年3月29日

 ようやくわたしのやっている仕事の話にたどりついたところで、この国が現在行っている「One Cow One Family」という大きなプロジェクトについてお話したいと思います。
 1994年の大虐殺のときに国土が荒廃し、それまで70万頭いた牛は16万頭まで減ってしまいました。各国からの援助でその五年後にはもとの頭数まで戻り、その後も人口増加とともに牛の数も増え続けたのですが、それでも大虐殺から10年たった2004年の時点で、国民一人当たりの牛乳消費量はまだわずか年間13リットルでした。FAOの推奨する量が年間52リットルであることを考えると、まだまだじゅうぶんとは言えない量です。特に農村部ではどの家庭も現金収入がないにもかかわらず子だくさんで、栄養失調児童の割合は40%を超えていました。
 そこで政府は国勢調査をもとに、特に農村部の貧困家庭を優先して牛を配布するプロジェクトを始めました。これが「One Cow One Family(すべての家庭に牛を)」プロジェクトです。海外の援助団体からの資金も大量に投入され、畜産技術の指導・牛舎建設の援助を行った上で、未経産の妊娠牛を配布してきました。このプロジェクトにはおもしろいルールがあって、牛を配布された家庭は、初めて生まれたメスの子牛を近所の家庭に無償でプレゼントすることになっているのです。そうすることで、国から家庭へ、家庭から家庭へと牛が次々に配布されていく作戦なのです。
 現時点で約8万世帯が牛を受け取り、2020年までに(計算上)ルワンダじゅうのすべての家庭が牛を所有する予定になっています。
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