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桐野有美のコラム
「ルワンダ便り−6 「ルワンダ牛乳」」

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2010年3月9日

 個人的な話になりますが、実はわたしは牛の獣医のくせに牛乳が飲めない体質で、日本の酪農業界の牛乳消費拡大キャンペーンを横目で見ながら、ずっと後ろめたさを感じていました。ところが、ルワンダへ来て最初の月に、村落体験ということで電気も水道もない貧しい田舎の村にホームステイしていたとき、そこで出されたホットミルクがびっくりするくらいおいしくて、しかも飲んでもお腹が痛くならなかったのです。こちらの牛乳は少々不衛生な方法で搾乳されているにもかかわらず殺菌処理をしていないので、よく沸かして飲まないといけないのですが、それがわたしには合っていたのかもしれません。また、来る日も来る日も芋と豆だけの食事だったので、牛乳がことさら美味しく感じられたのかもしれません。とにかくそれ以来、わたしもルワンダ人と一緒にほぼ毎日牛乳を飲んでいます。
 ルワンダの牛乳は日本のものより濃いようです。ルワンダ人はさらにそこへお砂糖を入れて飲むのが好きです。こちらの現地種であるアンコーレ牛は、乳量は少ないものの、脂肪分が高いジャージーのようなお乳を出します。そしてすばらしいことに、病気知らず!長い年月このアフリカで生き延びてきただけあって、とってもタフです。赤茶色の毛に大きな大きな角。農家さんは2、3頭の牛を家族のように大事に養い、牛も農家さんの言うことをよく聞きます。
 ここへ来る前、一軒に何十頭、何百頭もの牛が飼われている日本の畜産現場で診療しながら、昔、牛と人間がいっしょに農作業していた時代の話を農家のおじいさんおばあさんからよく聞いたものでした。そのたびに、そんな時代に生まれたかったなぁと思ったものですが、そういう意味で少しだけ夢が叶った感じがします。
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