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桐野有美のコラム
「子牛の口に入るもの−5」

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2009年2月4日

 まず、いったいいつまでにどれくらい飲ませれば「飲ませた」ことになるのでしょうか。
 基本的に、初乳が初乳として吸収されるのは生後24時間とされていますが、これは「24時間以内であれば、初乳を吸収する能力がずっと同じレベルで持続します」ということではありません。生まれた直後から24時間のあいだにどんどん失われていく能力、ということなのです。ですから、同じ量を飲ませるならなるべく早いうちに飲ませたほうがたくさん吸収できるわけです。
 分娩前の母牛の栄養管理がうまくいっていれば、生まれてきた子牛にも活力がありますから、すぐに自力で立ち上がって母乳を飲もうとします。こうなると、たいていの場合は母牛にまかせていいと思います。ただ、このとき子牛が頻繁に乳首を変えながら吸い付くようであれば、母乳がじゅうぶん出ていない可能性があります。また、初産である場合は、母乳の量も質も不十分であることが多いようです。特に生まれた子牛が大きい場合は、必要とする初乳の量も当然多くなります(必要な初乳の量の目安は、体重の10%。体重が40kgなら初乳は4Lです)。こんなときは、人間がそれを補ってやる必要があります。母乳がまったく出ないわけではないのなら、初乳製剤を1〜2L飲ませればいいと思います。母牛の乳首を覚えてしまうと、なかなか哺乳瓶の乳首に吸い付いてくれないことが多いのですが、いくつかコツもあるようです。それについてはのちほど。とりあえず、どうしてもダメならストマックチューブを使うのもありです。衰弱している子牛と違って、このように飲乳欲がある正常な子牛の場合は、ストマックチューブによるデメリット(これについてものちほど)があまりないと言われています。
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