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桐野有美のコラム
「子牛の口に入るもの−3」

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2009年1月21日

 子牛が完全に外界に出てきました。羊水を全身にまとって、地面の上に転がった状態です。まだ座ることもできませんから、顔を地面から挙げるのもひと苦労です。羊水で濡れた顔には、そこらじゅうのものがベチャベチャとくっつきます。母牛が舐めてきれいにしてやっても、子牛は早々に立とうして、ヨロヨロ・・・バタン!を繰り返し、せっかくきれいになった顔をまた敷き料の中に突っ込んでしまいます。そして転倒するたびに、顔を地面に押し付けるようにしてまた立とうと試みます。
 見慣れた光景ですが、これを“子牛の口に入るもの”に注目して観察すると、驚くほどそれが不衛生であることに気づきます。子牛は、免疫力という意味では人間の赤ちゃんより未熟な状態で生まれてきます。糞便や敷き料に含まれる大量の病原体は、子牛の胃腸に入ってやりたい放題です。初乳を飲むまでは、そこに本来いるべき防衛軍が全くいないのです。胃酸もまだです。善玉菌もまだです。免疫グロブリンもまだです。おおむね「ばい菌さん、ウィルスさん、いらっしゃい!」という状態と言えます。
 以前のコラム「お産の話−53 環境を整える(2)」でお話したように、分娩環境の整備は、ここから始まる一年間を占う非常に大事な作業だと思います。ストップ!べちゃべちゃ環境でのお産!・・・十分な量の乾燥した敷きワラの準備をどうかお願いします。大事な子牛誕生のたった1日のことですから。
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