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桐野有美のコラム
子牛の口に入るもの−2

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2009年1月14日

 生まれた仔牛が一番最初に口に入れるものって何でしょう?母乳?・・・だったらいいのですが、残念ながらそうではなく、母乳を飲む前にいろんなものが口に入ってきます。
 ご存知のように、胎仔にとっての「環境」そのものである子宮の中は無菌状態です。子宮の中で過ごしている期間中、胎仔は羊水を飲みますが、その羊水も無菌です。だから仔牛が生まれて初めて排泄する便(胎内にいるときに作られた便だから「胎便」と言います)を培養しても、何の菌も生えてきません。無菌の便です。
 そんな無菌状態で生活していた胎仔が外界に出るために通る道である膣は、子宮の中と違ってバイ菌だらけなのです。バイ菌だらけ、と書くとちょっと汚い感じがしますが、膣は、口や鼻の粘膜と一緒で“外界と交流のある粘膜”ですから、どんなに清潔に保っていても、そこにはたくさんの菌がいて当然なのです。この膣を通るときにまず何種類かの菌が子牛の口に入ります。仔牛は、産道をはじめとする環境から取り込んだ菌をもとに、将来の腸内細菌を構成していきます。つまり、生菌剤などを給与して妊娠中の母牛の体に善玉菌を増やしておけば子牛にもいいことがある、ということです。
 逆に、母牛の膣炎や下痢を放置していると、膣粘膜に悪い菌が増殖していることがあります。この菌、母牛にはそこまで悪さをしなくても、免疫機能ゼロの仔牛には重大な感染症を引き起こすことがあります。母牛に下痢をするようなエサ(カビのはえたサイレージや、変なニオイのするワラなど)をやることは、生まれてくる仔牛の体に悪い菌を取り込ませることになるということです。

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