(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
桐野有美のコラム
「お産の話−61 「ウィルス性の奇形」」

コラム一覧に戻る

2008年12月17日

 胎仔の奇形の中で、原因のわかっているもののほとんどが妊娠母牛のウィルス感染によるものです。有名どころとして、アカバネウィルスアイノウィルス、そしてチュウザンウィルスという3種類があります。こういったウィルスに一度も感染したことのない母牛が妊娠中に初感染を受けると、お腹の中の胎仔にさまざまな異常を引き起こします。胎仔が死んでしまって流産という形をとることもありますし、足や背骨が異常な方向に折れ曲がった体型異常という形であらわれることもあります。その他にも、脳が無かったり、目が見えなかったりと、いくつかのパターンがあります。
 これらは前回お話したように、すべてヌカカというがウィルスの運び屋となっていますので、蚊が活動する季節(夏〜秋)に感染が成立します。ということは、蚊が発生する前にワクチンを済ませなければならないということです。わたしたちの診療管内は、毎年4月に繁殖農家さんを巡回して一斉にワクチン接種します(上記3種類のウィルスに対応する三種混合不活化ワクチン)。
 いままでの報告を見ると、これらのウィルスは数年おきに突然流行するようです。わたしが大学に入学した1998年、九州を中心にアカバネウィルスによる異常産が流行し、毎日のように大学に奇形の仔牛が運び込まれてきました。毎週5、6頭の仔牛を解剖しながら、牛っていうのはこんなに奇形が多い動物なのか?と戸惑った覚えがあります。
|