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桐野有美のコラム
「お産の話−56 「やっぱり看護(3)」」

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2008年11月12日

 それから、分娩を予測する方法として研究されているのが体温と血糖値です。分娩前になると、母牛の体温は低下し、逆に血糖値は上昇します。そこで、分娩予定日が近づいた母牛の体温や血糖値を測定して、そろそろ分娩しそうなのか、まだずっと先なのかを予測しようというものです。
 血糖値については、大がかりな分析装置を使わなくても、人間の糖尿病患者向けに市販されている小型の簡易血糖測定器を使えば、牛の近くで短時間で測定できるとのことですが、いずれにしろ母牛から採血しないといけないので、農家さんが自分で実施するのはちょっと大変かもしれません。
 でも、体温なら体温計でチョチョッと測るだけなので、簡単にできそうですよね。特に最近は予測式のデジタル体温計を使うところが増えてきているので、それを使えば数秒で済みます。
 具体的には、分娩予定日の近づいた母牛の体温を、一日二回、午前と午後の決まった時刻に測定します。どうして「決まった時刻に」なのかと言うと、牛の体温は午前に低く午後に高くなるからです。だいたい一日のうちで一番低い時間帯と高い時間帯で比べると0.5℃くらい違うようです。ですから、「朝」測定した体温は、前日の「朝」の体温と比べます。夕方も同様です。
 前日の同時刻の体温より0.3℃低下していたら、それから一日半で(36時間後)だいたい娩出するようです。産まれてくる仔牛が双仔の場合はそれよりちょっと早くなるようですし、この「36時間後」というのはあくまでも「娩出」までの時間ですので、実際にお産がはじまるのはもう少し前です。「お産の話-2」でご紹介している、外見上の変化も参考にしながら、万全の準備を整え、興味をもって楽しみに待ちましょう。
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