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桐野有美のコラム
「お産の話−53 「環境を整える(2)」」

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2008年10月22日

 次に分娩房の中身ですが、難産を避けるためにはどんなことをチェックしたらよいでしょうか。大切なことは、母牛にとって精神的にも物理的にも安全であることです。
 分娩の経過を思い出してください。分娩は、微妙なホルモンの働きが連鎖反応のように次々とつながることで奇跡的にうまくいく作業です。人間もそうですが、苦痛や恐怖といったストレスは、ホルモン分泌やそのはたらきに影響を及ぼすことがわかっています。分娩房が静かで快適であること、また、分娩前には大きな変化を与えないことが大事です。できるなら、分娩予定日の一ヶ月前には分娩房に移動させたいものです。
 母牛は陣痛が始まってから、胎子の姿勢や向きを整えるために頻繁に立ったり座ったりを繰り返します。ですから、コンクリがむき出しになっているような滑りやすい分娩房は非常に危険ですし、そのこと自体が大きなストレスとなります。畜産マットや敷き料をしっかり敷きましょう。敷き料については助産のところでも書きましたが、母牛の膣や仔牛の口・臍帯を汚染しないよう、オガクズやモミガラなどではなく、乾いた長めのワラを準備してくださいね。また、母牛がある程度自由に動ける広さも必要です。
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