(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
桐野有美のコラム
「お産の話−52 「環境を整える(1)」」

コラム一覧に戻る

2008年10月15日

 「母牛の栄養管理」の次は、分娩のための環境整備です。特に多頭飼育の場合は一頭の母牛が分娩房で過ごす期間が限られていると思いますが、分娩前後のわずか数週間がその後の子牛育成期間すべてを左右すると考えると、おろそかにはできません。次のようなことに気をつけて準備してみましょう。
 まず、一頭一頭を個室で飼育している農家さんは別ですが、ふだんは連動スタンチョンを備えたパドックなどで飼育して、分娩前になると母牛を分娩房に移動させるという農家さんでは、その移動タイミングをはかるのもむずかしいものです。同じ間隔で子牛が生まれるわけではないので、どうしても分娩がたてこむ時期は分娩房への移動が遅れがちですよね。増頭するにあたって、まず確保していただきたいのがこの分娩房と、子牛の哺育スペースです。これらの数を増やさないで母牛の数だけ増やし、そのしわ寄せとしてお産の事故が発生したり、不潔な分娩環境で臍帯炎や腸炎、肺炎を多発させてしまったりしては、本末転倒ですよね。分娩房に滞在する期間は、自然哺乳なのか、早期母子分離なのかによって異なりますが、「一ヶ月に生まれる平均頭数×分娩房滞在月数」で最低限必要な分娩房の数を計算し、それに少し余裕をもたせた数を確保したいものです。

|