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桐野有美のコラム
「お産の話−48 「まずは栄養管理(9)」」

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2008年9月10日

 実は、青草の中に豊富に含まれているβカロチン(ビタミンAのもと)は、収穫後、乾草にしたりサイレージにしたりするときに分解されて大幅に減ってしまうのです。また、牧草の中に硝酸態窒素や、カビなどが含まれていた場合にも、せっかくのビタミンAがそれらによって帳消しになってしまいます。
 こんなことでは、いま給与している牧草にいったいどれくらいのビタミンAが生き残っているのかわかりません。このビタミンAの不安定さと、「分娩前後には大量のビタミンを使うよ」という事実とを考え合わせると、やっぱり分娩前に一度、ビタミン剤として投与しとこう!ということになるわけです。
 ちなみに、ビタミンAが不足すると、ストレスに弱くなるだけでなく、子宮や乳腺といった仔牛に関係する部分の粘膜が傷みやすくなったり、病原体に対する抵抗力が下がったり、また、お産のあとの繁殖障害につながったりと、ろくなことはありません。そのうえ、母牛のビタミンA不足のせいで、「初乳」に含まれるビタミンAの量も不十分になって、仔牛までもがビタミンA欠乏になってしまうこともあります。
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