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数面麻子のコラム
第118話:子牛についていろいろ・・・㉒

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2016年2月5日

 子牛は外の世界に出ることで、心臓や血管系に大きな変化があっという間に起きてしまいますが、それがたまに上手く完成しないことがあります。それが心臓で発生したものが、先天性の心疾患(心奇形)です。牛で一番多いとされている心奇形は心室中隔欠損です。文字通り左心室と右心室の壁に穴が空いた状態となっています。その次が心房中隔欠損で、これは卵円孔が上手く閉鎖しなかったことによるものが一番多いです。その他、動脈管開存(馬で多い)など、心奇形は他にも色々あります。これらは、動脈血と静脈血が混ざり合うため、チアノーゼや赤血球増加症、また、どちらかの心室に負荷がかかり続けることにより心室拡張を起こすなどの症状が見られます。これら心奇形は軽度であれば症状が出ないものもあります。また、診断は聴診のみでは難しい場合があり、確定診断するにはエコー検査やレントゲン画像など、牛さんの世界ではまだまだ一般的とは言えないものが必要となるうえ、治療法もないため、遭遇するとなかなか厄介な病気です。

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