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戸田克樹のコラム
第71話「白血球のおはなし②~戦場にすぐかけつける好中球~」

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2016年2月2日

伏見「戸田先生、カメラかして~」
戸田「はい、どーぞー♪」

伏見「こりゃあ、やばいでしょ~(笑)」
カシャ☆
戸田「????」
伏見「ほい♪」

戸田「!!!!!(‘Д’)」

まったく気づきませんでした。
こんな危険な状態で走行していたとは。ありがとうございます、伏見獣医師(泣)。
戸田、今後は車両チェックをこまめに行います。安全第一です。
 
 
さて、そもそも牛さんの白血球は血液中にどのくらい存在しているのでしょうか。

教科書には5,000~12,000/μLと記載されています(『獣医内科学 大動物編』文英堂出版参照)。つまり「血液1μLあたり、5,000~12,000個ありますよ」ということですね。

白血球の仕事は体内に侵入した異物をやっつけることです。
細菌やウイルスが入り込むと、その侵攻を食い止めるために血液中に白血球がわんさかと放出されるのです!!

そのため、血液中の白血球が増えている場合、
「お??体内に侵入した細菌やウイルスと白血球が戦っている状態だな。」
とまずは判断することができるのです。
(感染がなくても増加する場合や、基準値を下回る場合ももちろんありますが、それがどういうことなのかはまたの機会に。)
 
 
このときに主役になるのが白血球の中でも武闘派の好中球さん。

もともと白血球の中でも70%程度はこの好中球が占めているので、「白血球数が高い」場合は、まず「好中球が増えている(つまり、何らかの感染が起こっている)」と考えてOKなのです。

好中球の仕事は「細菌を食べて殺菌すること」。勇猛果敢な戦士です。
とりこんだ細菌には、細胞内にある顆粒から「ミエルペルオキシターゼ」や「リゾチウム」といった酵素を分泌し、細菌を殺します。

覚えにくい酵素名ですが、要は
「好中球は体に入った細菌を食べて、顆粒内にある酵素でガンガンやっつけてしまう」
ってことです。それはそれは優秀な戦士です。

でも、細菌を食べる⇒殺菌する⇒食べる⇒殺菌する…
とやっていても効率が悪いです。

そこで!
好中球は考えました。

「ビームだ!!ビームで一気に片づけよう!!」

まあ、ビームは出せないのですが、好中球はその細胞から活性酸素をブワー!!っとまき散らし、周囲の細菌を一気に叩こうとします。
この活性酸素は「細胞障害性」があり、その作用は強力です。

これで一気に解決だ♪

…しかし。
残念ながらこの活性酸素、細菌だけでなく周囲の細胞まで傷つけてしまうのです。
そして細胞に傷がつくと、新たな炎症反応がそこで起きてしまって…。

トホホ。
好中球さんも張り切りすぎるとやっかいです。

イラストはあくまでもイメージですのでご了承ください(汗)

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