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戸田克樹のコラム
第69話「ボツリヌスの恐怖 その5」

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2016年1月19日

大学受験生のみなさま!センター試験たいへんお疲れさまでした!!
毎年、試験日は天気が崩れるようですが、今年も漏れなく崩れましたね(汗)

戸田は3回センター試験を受けました。トリプルセンターマンです。
天気ですか?そりゃあもちろん例年通りでしたよ(笑)
 
 
さて、今回はまた牛に話を戻しましょう。
ボツリヌス菌が大量に存在している場所は鳥の糞以外にももちろんあります。
空気に触れてしまった変敗サイレージや動物の腐敗した死体が混入したエサです。大量に増殖した菌を接種してしまえばもちろん発症するのですが、これまでに飼料などからは菌が分離されたことはないようです。大量の菌が飼料に発生していれば、ランダムに採取した材料から細菌はとれるはずなのに…。

では何が被害を広げるのか。

それは感染牛の糞なんだとか!!!(‘Д’)
 
 
とある発生農場において、「一見健康に見える生存牛から大量のボツリヌス菌と毒素が長期間排泄されたことが確認された」という報告がありました(『臨床獣医 2016.01 幸田知子先生らの報告より』)。

つまり…

微量の菌(ランダムな材料採取では検出できないくらいの量)を牛が接種
      ⇓
腸管内で菌が増殖し、それに伴って毒素を放出
      ⇓
大量の菌と毒素を含む糞便を排泄
      ⇓
牛舎内に菌と毒素がちらばる
      ⇓
他の個体も次々と感染し、発症

という感染拡大が生じてしまうのです。
 
 
「最初の感染牛を出さない」
それがいかに重要なことかが分かります。感染牛から排菌や排毒がはじまれば、もう手のつけようがありません。あ!!!っという間に感染牛は増えてしまいます。

ボツリヌス毒は神経毒です。
発症牛は筋肉の麻痺を起こし、歩き方がおかしくなる、立てなくなる、突然エサを食べなくなる、異常によだれをたらす、顔つきがおかしくなる、といった症状を呈し、いずれ呼吸不全で死亡してしまいます。

牛では治療法がないため、対策は予防しかありません。
現在は不活化ワクチンが販売されていますので、過去に発生した農場や、近所で発生が報告された農場がある場合はワクチンの使用を実施するのは非常に有効です。

また、今月の『臨床獣医』に大阪府立大学の幸田先生らがカビ毒吸着剤によるボツリヌス毒素の吸着実験の報告を掲載されていました。万が一発症牛がでてしまった場合には、吸着剤を添加して被害拡大を防ぐという方法も有効なようです。

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