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桐野有美のコラム
「お産の話−31 「母牛が寝ている状態では」」

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2008年5月7日

 和牛では、ほとんどの場合が起立した状態で分娩するのですが、ときどき座った状態や寝た状態で娩出に至ることもあります。母牛が自力で産めそうな場合は、特に無理して立たせる必要はありませんが、なんらかの異常があって人間の手が必要となると、この姿勢では対処しにくいことがあります。つまり、寝た状態だと、母牛の大きな胃袋が子宮を後ろへ後ろへと圧迫するので、特に産道の中で仔牛の体勢を変えなければならないときはスペースが足りなくて作業しにくいのです。母牛がどうしても立てない場合は、カウハンガーで母牛の腰を吊って立たせたり、仰向けに寝かせた母牛の後ろ足を高く吊り上げたりした状態で仔牛の姿勢を整復しますが、このへんの処置になると母牛の今後にかかわる問題が出てくるので獣医を呼んだほうがいいと思います。
 しかし必ずしもそのような処置が必要というわけではないので、寝ている母牛の産道に手を入れてみて、仔牛が正しい姿勢になり、このまま引っ張れば出そうだな、と思ったら、前回までの牽引の方法を応用して引っ張ってみましょう。このときのコツは、下になっているほう(地面に近いほう)の足から引っ張るということです。そして、起立位での分娩と同様、仔牛が出てくるにしたがって下方向に(母牛の乳房に向かっていくように)引っ張るとスムーズです。
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