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桐野有美のコラム
「お産の話−30 「今度は腰が・・・」」

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2008年4月30日

 仔牛の体には、産道にひっかかりやすい大きな部分というのが二箇所あります。ひとつは、肩から胸にかけての部分、もうひとつは腰です。一方、母牛の産道、特に骨盤腔は無限に拡がるわけではありません。いくら靭帯がゆるんでも、骨でできたトンネルですから。
 さて、前回お話した、「球節からさらに15センチ上くらいまで見えてきた状態」というのは、実は第一難関である“仔牛の肩”が母牛の骨盤腔に進入したよ、という段階なのです。そしてさらに牽引を続けると、第二難関の“仔牛の腰”が骨盤腔内に進入します。ちょうどこのとき、仔牛の骨盤が母牛の骨盤の中を通れず、引っかかってしまうことがあります。「ヒップロック」という現象ですが、もしこのような状況になってしまった場合は、仔牛の体を少し押し戻し、そのまま90度回転させてみてください。実は母牛の骨盤腔の入り口は、すこし縦長の楕円形になっている一方で、そこを通過しようとする仔牛の腰の断面は横長の楕円形になっているのです。そこで、仔牛を90度回転させることによって形をそろえると、通過しやすくなるというわけです。
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