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桐野有美のコラム
「お産の話−32 「難易度の高いケース」」

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2008年5月14日

 ここまでご紹介したお産のケースは、比較的よく目にするもので、かつ整復もさほど困難でないものですから、まず「手を入れる」ことに抵抗がなくなること、そして触っているものが仔牛の前足なのか後ろ足なのかがわかるようになれば、だいたいうまく娩出させられると思います。
 問題は、難易度の高いケースです。(年間何百頭も産ませている大規模酪農家さんは別として)そうめったに経験するものではないと思いますが、「そんなのがあるんだなぁ」程度に心に留めておいていただけたらと思います。
 難易度の高い胎仔の体勢として、胎仔が足や頭ではなく、背中やお尻をこちらに向けて出てこようとする、通称「腰掛け」(縦背位・横背位)や、足が一、二本ではなく三本も四本も出てきてしまうケース(前足と後ろ足をそろえてこちらに向かっている縦腹位・横腹位、あるいは双子)があります。それから、忘れてならないのが子宮捻転。出入り口のところで子宮がねじれて仔牛が出てこられません。とっくに産気づいてるのにいっこうにお産が進行せず、母牛は腹を蹴ったり尾を振ったりして異常に痛がっているときはこれを疑います。手を入れたら、子宮の出入り口がギュッと狭くなってねじれているのがわかると思います。いずれにしても獣医に電話!がおすすめです。
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