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お産の話−28 「魔法の手」 |
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2008年4月16日
前回のお話で出てきた、「産道に手を入れて仔牛の通過を手助け」する方法について説明します。たしかにただ牽引するだけでも仔牛は出てくるとは思うのですが、よりスムーズに、かつ母仔に与える負担をできるだけ小さくするために、このひと手間をおすすめします。 やることは単純。牽引を始めるとき、母牛の産道の中もしくは外陰部ギリギリまで出てきている仔牛の後頭部に手のひらを添える、ただそれだけです。たとえ母牛のいきみで押し出されそうになろうとも、仔牛の頭全体が完全に外界に出てくるまではその手を後頭部から離してはいけません。つまり、産道の内壁と仔牛との間に、あなたの手がはさまることで、“すきま”をつくるのです。そう、ちょうど靴ベラのような感じです。 不慣れな頃は、焦ってとにかく引っ張ることばかり考えて、仔牛の頭に手を添えることを忘れてしまいがちでした。そのたびに蓮沼先生に「桐野先生!魔法の手を入れるんだ!」と叱咤されたものです。そして実際に仔牛の頭でパッツンパッツンに引きつった外陰部にどうにか手を挿し入れたとたん、それまでひっかかってた仔牛の頭がつるんと出てくるのが不思議でしかたがありませんでした。

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