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桐野有美のコラム
「お産の話−26 「後頭部に手が入りますか?」」

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2008年4月2日

 次に頭の結び方です。ひと結びして輪っかを作って、それを仔牛の頭に猿ぐつわのようにかけます。この輪っかを仔牛の後頭部(両耳の後ろ)にかけるのがちょっと難しいかもしれません。なにせ羊水でヌルヌルしているので、できた!と思った直後にツルンとはずれてしまったり。コツは、はじめに輪っかを小さめに設定すること、そして、輪の向こう側を後頭部にかける前に、結び目を仔牛の口の中に入れて、そこを支点にして輪を頭の奥に押し込むようにすることです。伝わるでしょうか・・・。ロープをしっかりかけたら、残った手前のロープを引っ張って輪をしっかり締めます。
 このとき、産道の内壁と仔牛との間にすきまがほとんどなくて、みなさんの手が仔牛の後頭部まで入っていかない場合は、牽引を中止してください。仔牛が大きすぎるか、産道が狭すぎる(あるいはその両方)ケースです。“母体骨盤腔-胎仔の不均衡”といい、このまま無理に牽引すると、母子ともに大きなダメージを受ける可能性があります。獣医師を呼んで、必要ならば帝王切開することになるかもしれません。すみやかに手術を始められるよう、帝王切開の判断やその準備について日頃から獣医さんと打ち合わせをしておくといいと思います。
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