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戸田克樹のコラム
第65話「ボツリヌスの恐怖 その2」

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2015年12月21日

「なんだか目がおもたいなー。ショボショボする(‘Д’)」
ということで、先日眼科を受診しました。
久しぶりの病院。扉の向こうには、たくさんの人が!!!
平日に行ったのに、昼前にいったせいか30人待ちとのこと。

(´・ω・`)ショボボボーーン。

待ち時間の間、ひたすら待合室のテレビを「ボケぇー」っと見るしかなかった戸田はお子ちゃまでした(泣)。

病院に行くときには時間をつぶせる何かを持っていかないといけませんね。
ひとつ知識を身に着け、大人への階段をまた一段のぼった戸田なのでした。
あと何段あるんだろう、この階段…。

ちなみに診断は「ドライアイ」でした。みなさん、長時間のスマホやパソコンはNGですよ。
 
 
さて、ボツリヌス菌がなぜ恐ろしいのか。

それは彼らが「芽胞」を形成するからなのです。

嫌気性細菌といって、空気(酸素)が大嫌いなボツリヌス菌。
そのため外気に触れるところでは、『芽胞』というカプセルを作って文字通り自分の殻に閉じこもるのです。
ひきこもりです!!


(イメージ図)

さらには生体内に進入された場合、抗生剤で治療しようとしても…。
抗生剤で倒された仲間が「退治されたシグナル」を放出し、その途端みんなが一斉にカプセル形成を開始。
集団で殻に閉じこもります。

このカプセルの防御力は非常に強力で、「120℃で30分加熱すると死滅する」とのこと。

火炎放射器をふりまわせば芽胞でも倒せるじゃないか!
とはいっても、牛舎ではそんなことできるわけもなく、舎内に入り込んだボツリヌス菌(芽胞)は半永久的に残存することになるのです。ちなみに、消毒液にも強力な抵抗性を示すため、散布してもほとんど効果なし。とにかくやっかいなのです!!
 
 
「あれ?ここ、なかなかいい環境やん。」
と、周囲が生育に適した環境だと認識すると彼らは殻を破って出てくるのです。
芽胞から目覚めた細菌は増殖を開始!それに伴って神経毒が放出され始めるのです。


(イメージ図)

有名な話ですが、ボツリヌス毒は世界最強。その致死量は成人1人あたり0.7μg程度。たった1gで100万人が死亡してしまうという強力な毒なのです。もちろん、ボツリヌス菌にもいろいろなタイプがあって、人間が感染するタイプはA、B、E、F型。牛はC型とD型のみで、すみわけがされていますので、発生牛がでたとしても農場スタッフの皆さんまで発症してしまうことはまずありません。

さらに、芽胞から飛び出した細菌を接種してしまったとしても、ある程度年齢を重ねていればもともと体内にいる腸内細菌さんたちがボツリヌス菌を撃退してくれるのでまず発症はないといわれています。

はぁ。ひと安心。
でも…。

つづく

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