(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第64話「ボツリヌスの恐怖 その1」

コラム一覧に戻る

2015年12月15日

昨晩、書き上げたコラムのデータが消えました・・。
今日のコラムに間に合わせるために残業して書き終え、ついでに他の仕事を済ませ、帰る前に内容に不備がないかコラムを開いたところ

「申し訳ございません。データが破損しているため開くことができません」

とのこと。
( ゚Д゚)「おっつ…。」

ひとり事務所で黙々とパソコンと向き合った戸田、終了です。
 
 
 
さて、このテーマからしばらく離れておりました(笑)。今日からまたこのテーマでコラム再開です。
今回のテーマは「ボツリヌス症」。
もちろんこの病気の原因となるボツリヌス菌も鳥の糞からよく検出されることで有名です。
今回は牛さんの生命にも大きく関わるこの病気に注目です。

筋肉への連絡を遮断してしまう毒素
細菌が感染しただけではとくに問題はありません。ボツリヌス菌は増殖するときに「ボツリヌス毒素」という神経毒を放出し、それが牛の生命を脅かすのです。

神経毒ってなんでしょう。
神経と筋肉の連絡部には少し隙間が空いています。神経のはじっこからは「アセチルコリン」という神経伝達物質が放出されます。このアセチルコリンに、「筋肉をどう動かすか」という指令がつまっています。脳からでた指令は神経を通ったあと、アセチルコリンによって筋肉へと伝わるのです(下図参照)。

ボツリヌス毒素はこのアセチルコリンの放出を阻害することで筋肉への指令を妨げ、筋運動ができない状態にしてしまうのです。

では、筋運動ができなくなるとどうなるのでしょう。
足の筋肉に指令がいかない → 歩行障害、起立不能
顔の筋肉に指令がいかない → 大量の流涎、無表情
呼吸筋に指令がいかない  → 呼吸困難

牛さんにとっては立てないことは死につながりますし、まして呼吸筋が抑制されればあっという間に死んでしまうのです。
治療法は現在確立されておらず、発症すれば非常に高確率で死亡となるおそろしい病気なのです。

「でも、細菌なんだし乾燥や消毒でやっつけちゃえばいいじゃない。」

それが、そうもいかなくて…。

つづく

|