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数面麻子のコラム
第112話:子牛についていろいろ・・・⑱

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2015年12月18日

 今回は、寝ている間も遊んでいる間も食べている間も・・・生きている間ずーっと働き続けてくれる心臓、そしてその周辺組織(循環器系)についてのお話です。
 妊娠鑑定の際に、まだエコー画像で肉団子のようにしか映らない時期の胎仔でも、その中心部で心臓が頑張って動いているのが分かります。心臓は早期に完成する臓器です。胎仔期の循環器は成牛とは少し異なる構造をしています。成牛は右心と左心はそれぞれの部屋できちんと分けられているのですが、胎仔の心臓においては、左右の部屋が繋がる箇所が存在します。その箇所が「卵円孔」と呼ばれる、右心房と左心房をつなぐ孔です。後大静脈から流れる、比較的酸素濃度の高い血液を左心房に送るために重要な構造です。また、肺動脈と大動脈をつなぐ「動脈管」と呼ばれるものがあるのも胎仔期循環器の特徴の1つです。酸素の多い血液と少ない血液が混ざり合うことにより、胎仔は低酸素状態にあります。その環境下では肺の循環は収縮し、より全身組織に酸素が行きやすくなるのです。胎仔は肺呼吸をしないので、胎盤からの酸素を肺ではなく全身に循環させるために、このような胎仔期限定(分娩後もしばらくは存在しますが・・)の仕組みが存在します。

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