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桐野有美のコラム
「お産の話−22 「頭がない?」」

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2008年3月5日

 一方、前肢は左右ともちゃんと出てきているけど、頭はどこだ!?というケースもあります。ただ、自然にこうなることはめったにありません。ほとんとの場合が、仔牛の両前肢にロープをかけて人為的に牽引した末にこうなってしまったもののようです。産道がじゅうぶんに開ききらないうちに、仔牛の足だけを牽引した結果、仔牛の頭が産道の狭い部分に引っかかって取り残され、図のようになってしまっている状態です。これではどんなに引っ張っても出てきません。やはり前回ご紹介したケースと同様、いったん奥に押し戻し、仔牛の頭をすくうようにこちらへ向けます。このとき、仔牛の歯で自分の手を切らないように気をつけてください(私はよく切ります・・・)。じゅうぶん奥まで押し戻してスペースさえ確保できれば、仔牛も自力で頭をまっすぐにしようとしますが、不幸にも仔牛が死んでしまっている場合はなかなか整復が困難です(←これは他の難産パターンにも言えることです)。
 ちなみに、仔牛の両前肢にロープをかけて牽引するのは間違いではありません。でも、もう一本、仔牛の頭にもロープをかけて引っ張ることができれば、このようなタイプの難産を引き起こすことはなくなります。また、子牛の頭がひっかからないよう、牽引の前に母牛の産道をじゅうぶん開かせることも大事です。
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