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桐野有美のコラム
「お産の話−19 「母牛の産道はこうなっている!」」

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2008年2月13日

 さっきの消毒液の残りで自分の指先から腕までをしっかりと洗ったら、いざ!手をいれてみましょう。このとき、指をすぼめてゆっくりと、とにかく産道を傷つけることのないように気をつけます。もちろん爪は短く切っておいてください。
 母牛の産道は、手を入れてすぐは狭いのですが、すぐに広くなります。ここがです。手を入れて10cmくらいのところの底面に、穴があいています。これは尿道の開口部です。指を開いた状態で急いで突っ込むとここに指が入ってしまって傷つける可能性がありますので、とにかくゆっくりと!
 そこからさらに20cmくらい進むと、再び狭くなっています。外子宮口、つまり子宮の入り口です。ここから10cmの区間は子宮頚管という、硬くて狭いゾーンで、これで外界と子宮とを隔てて、子宮の中を守っているのです。子宮頚管が仔牛が通れるくらい十分に開いていることが、仔牛を牽引する前提条件になります。ちなみに、破水の前に水風船みたいなの(尿膜・羊膜)が少しずつ顔を出しますが、あの水風船は産道を進みながらこの狭いゾーンをグググーッと開いているのです。だから、緊急時を除いては、基本的に破水前の膜を無理に手で破いてはいけません。
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