|
|
出産直前まで「封印」されていた呼吸機能が一瞬にして活動を開始することで、ついに仔牛は胎盤からの独立を果たします。そしてそのためには、母牛の正常な陣痛と娩出力が鍵になるというわけです。 さて、呼吸開始ともうひとつ、仔牛は外界に適応するために体の中のある構造を変えなくてはいけません。それは、胎盤血行(へその緒を介した物質のやりとり)です。外の世界ではもうへその緒に頼らずに生きて行かなくてはならないので、この胎盤血行を停止させる必要があります。このことはお産の介助にはあまり関係がなさそうですが、生まれてすぐの仔牛の呼吸がおかしかったり、臍帯(へその緒)が炎症を起こしたり、といったしばしば遭遇するトラブルと関係がありますので、正常な変化をざっと見ていきましょう。 まず、胎仔は母牛のおなかの中で、どのようにして胎盤から酸素を取り込んでいるのでしょうか。成牛の血液の流れと比較してみましょう。 成牛では、血液は心臓というポンプで押し出されて肺に行き、肺で酸素を受け取りますよね。でも、胎仔の肺はまだ空気を吸うことができませんから、肺に血液を送っても意味がありません。そこで、胎仔の血管には「肺を通らずに済む抜け道」がふたつあります。これによって、効率的に血液循環しているんですね。
|